風に吹かれて 30(2015年7月10日)

佐々木委員長コラム「風に吹かれて」 30(2015年7月10日)

閣議決定から一年/国民の理解は得られたか

自衛隊発足から六〇年を迎えた昨年の7月1日、安倍内閣は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定しました。その際、歴代内閣が違憲としてきた解釈を変えたことに対し「丁寧に説明を行い、国民の理解を得る努力を続けていく」と表明しました。しかし、その言葉を真に受けて良いのかは極めて疑問です。第2次安倍内閣発足は、2012年12月26日。自民党改憲草案に沿って、憲法9条を変えるため、まず憲法96条を変えると言い出します。それが批判を浴びたので、今度は集団的自衛権行使容認にむけ憲法解釈変更へと路線変更。憲法の番人である内閣法制局が抵抗するなら、長官の首をすげ替えて、内閣法制局を政権の番犬に変える。安倍首相は、2014年2月の衆院予算委員会で「(憲法解釈の)最高責任者は私だ」とまで言いました。「信頼揺らぐ法制局/安倍政権の罪は深い」は北日本新聞の社説見出しです。



2014年12月の衆院選後、自民、公明は安保法制関連法案の協議を再開。現在、衆院平和安全法制特別委員会で審議中です。しかし、審議を重ねるほど国民の不支持は増えるばかりです。共同通信が6月末に行った世論調査では、安保法案反対が58.7%で5月調査から11.1%増。法案の今国会成立反対も前回調査から8.0%増えて63.1%でした。それにも拘わらず那覇市、さいたま市の参考人質疑に続き、特別委は採決の前提となる中央公聴会を13日とする日程を与党、維新の賛成多数で議決。15日の特別委採決、16日の衆議院本会議での可決、通過を目指します。いわゆる「60日ルール」を念頭に、なんとしても今国会で成立させようとの意図はミエミエです。



現行憲法の平和主義は、日本国民だけでも三百万人以上の犠牲者を出した大戦の反省にたって確立されたもの。しかし、何故今集団的自衛権が必要なのか、まともな説明はありません。5月20日党首討論での「私の言っていることは正しい。私が総理大臣なんですから。」「ポツダム宣言はつまびらかに読んでいない。論評は差し控えたい。」に至っては開いた口がふさがりません。「戦後レジームからの脱却」「憲法改正」「侵略戦争ではなかった」と主張する首相が、たった13項目のポツダム宣言さえ頭に入っていないとは。ドイツのメルケル首相が「ベルリン宣言は読んでいない」とは決して言わないでしょう。首相側近の「マスコミを懲らしめる、つぶす」発言も「官邸の本音」と聞こえてしまいます。



国民に説明できない、国民が望まない法案を憲法のコントロールが効かないところで成立させる政治は民主政治の対極にある独裁政治です。独裁政治を許さない運動は、いよいよこれからが正念場です。


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