風に吹かれて 26(2015年1月30日)

佐々木委員長コラム「風に吹かれて」 26(2015年1月30日)

2015年版経労委報告から見る春闘の課題

1月20日、経団連の対応方針「経営労働政策委員会報告」が出されました。経団連は、⒉年連続ベースアップ容認の姿勢を示す一方、「総人件費管理の徹底」など従来の「支払能力論」に固執し、「底上げ」「格差解消」には、後ろ向き。特に昨年12月の「経済の好循環の継続に向けた政労使の取り組み」で示された下請け企業への発注単価引き上げや非正規の処遇改善への対応策は一切明らかにしていません。

グローバル大企業には一定のベアを認めても、国内企業は低コストに抑えたいとの姿勢です。そこには、中間層の縮小が世界でも異例のデフレを招いたことへの反省はありません。むしろ国内経済を顧みない身勝手な主張であふれています。労働者保護ルールでは、1日8時間労働制の適用から外す「残業代ゼロ制度」を研究職、技術職へ拡大。派遣法では、「均等待遇」「派遣は臨時的・一時的労働力需給調整制度」という国際標準から外れる法改正を急げと主張。非正規労働者の権利を擁護するため、欧州諸国では既に類例が導入されている「労働契約申し込み見なし制度」をはじめとする2012年改正を「不合理な規制強化」と決めつけ、速やかな見直し議論を求めています。最低賃金では、地域別最低賃金の大幅引き上げを牽制し、特定最賃の廃止にまで言及。その他にも、法人税のさらなる引き下げ、原発早期再稼働、社会保障給付抑制などを列挙しています。消費増税、円安物価高、社会保障切り下げによる国民負担増や進む格差と貧困問題にはほとんど触れていません。痛んだ雇用を増幅させた20年前の旧日経連「新時代の日本的経営」以降、個々の企業は「自社の支払能力」を盾に人件費を削減してきました。ところが、「合成の誤謬」によって国内経済は低迷してきました。これを繰り返すことは許されません。

1月21日、自民党行政改革推進本部は、財政再建策を議論する党内組織を新設し、社会保障や地方公務員給与の大幅な引き下げを検討するよう求める提言をまとめました。しかし、労働者こそ消費者であり生活者です。賃金が下がればものは買えません。中小企業労働者、非正規労働者の底上げ、最低賃金の引き上げ、関連企業の処遇改善や発注単価の引き上げ、公正取引の実現なしに経済の再生はありません。公務員賃金も、公が責任を負う分野で賃上げに背を向けることは政策の矛盾です。分配のゆがみを是正するためには社会保障の充実や適正な税制も必要です。オバマ大統領は、1月21日の一般教書演説で、「富が偏ることは良くない。中間層を支援するため、経済成長における公平な富の配分を急ぐ。」として、税率を通じて富裕層の課税強化を表明しました。

普通に働き、普通に暮らせるよう労働組合を先頭に多様な仲間が結集する春闘こそ暮らしを向上させる絶好の機会です。

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