今年の原爆忌の後、被爆者が総理に対し「集団的自衛権容認」の閣議決定を取り消すよう求めました。しかし、総理は「見解の相違ですね」と言って席を立ったとの報道がありました。総理は「丁寧に説明する」と言っていたはず。国民の中でも最も戦争を危惧する被爆者にどう説明するか、為政者としての技量が発揮されなければならない場面で、「考え方が違うのだから説明してもわからないだろう」と宣言して議論を打ち切り、突き放す。直前のあいさつで「被爆者の皆様の心に寄り添い・・・」と言ったばかり。冷淡かつ無慈悲な「独裁者」の一面を覗かせました。当事者の気持ちを思うと底知れず虚しい気持ちになります。
そんな安倍氏がリーダーの自民党の政権公約に沿って出されたのが今回の人事院勧告。
まず、人事院が労働基本権制約の代償機関としてその役割を全うするためには、労働者・労働組合の意見を十分踏まえる必要があります。ところが、全面的に使用者側(政府)の意向に沿って、ベテラン職員と地方勤務者の賃金を一律に引き下げる「見直し」を勧告。しかもその必要性・根拠となるデータを提示せず、まともな説明も行っていません。民間であれば、不利益変更提案の際、データ提示や合意形成を図るための努力がない場合「不誠実交渉」とみなされ、「不当労働行為」となります。今回の人事院の対応は、民間では許されない不当労働行為まがいなのです。
次に、勧告当日に地方三団体は「声明」を発表。内容は、「地方と都市部の公務員給与水準の格差が拡大。結果的に官民を通じて地域間格差が拡大。政府が取り組む地方創生に逆行して地方の活力が失われないような措置を」というもの。またぞろ地方をはじめとする弱者に負担がしわ寄せされるのでは、という懸念が示されています。ところが、その一週間後、総務省は「自治体も給料表引き下げを」とする「検討会中間報告」を公表。これでは、結局民間と国家公務員賃金を比べ低い方に合わせるべきということになります。今回の制度を地方に強制することは、国と地方に主従関係を持ち込み地域手当対象外自治体が八割の地方公務員をターゲットにした「合法的下請けタタキ制度」を強制するということ。地方自治の番人である総務省が決してやってはいけないことです。しかも、二〇〇五年には対処された退職金への配慮さえないのです。人事委員会、県当局には権利と地方自治を守るのだという「意地」と「正義」を貫いてもらわなくては。