安倍内閣の姿勢が次第に明らかになってきました。第三の矢=成長戦略はとんでもない「毒矢」。「産業競争力会議」で議論されている「国家戦略特区」では、強いトップランナーをさらに特別待遇し、世界一の日本を目指すと言います。しかし、トリクルダウン理論が空論であることは既に実証済み。TPP交渉参加が象徴的ですが、「世界一企業が活動しやすい国」にするためには、地方というお荷物は切り捨てると方向転換。お荷物は、地方だろうが、雇用だろうが、社会保障だろうが切り捨てるという姿勢が透けて見えます。行き着く先は、成果は富裕層と大企業が独占し、あらゆる格差が拡大した小泉・竹中構造改革の悪夢。しかも、安倍首相の憲法軽視の政策は、「国民」より「国家」、「地方」より「中央政府」、「弱者」より「強者」優先で、戦前の富国強兵政策を連想させます。「日本を取り戻す」と言いますが、働く者を犠牲にしてまで一体何を取り戻そうというのでしょうか。
自民党は、政策集J―ファイル2012で、毎年2兆円の公務員人件費削減を書き込み、参議院選挙に向けたJ―ファイル2013では具体的手法として、五〇歳台と地方をターゲットに総人件費削減を行うとしました。人事院は、「労働基本権制約を代償する」という使命があるにも拘わらず、自民党の政策に沿って「給与制度の総合的見直し」を宣言。政府は十一月に「14年度中から実行できるよう人事院に具体的措置を要請する」と閣議決定までしました。しかし、これが実行されれば、地域間格差の拡大・固定化に繫がり、確実に地方活性化に逆行します。そもそも総務省は、「給与の制度は国、水準は地方」と主張しますが、全国の都道府県や政令指定都市、東京都特別区、和歌山市には、給与勧告権を持つ人事委員会があります。民間調査に基づき「均衡」をはじめ「平等取扱い」「情勢適応」「職務給」などの原則を担保しつつ、人材を確保し、住民の理解を得る仕組みになっています。ところが、これを疎外しているのは、国が地域手当など地方に合わない制度を無理強いしているからです。民間事業従事者の給与を精確に反映するには、まず国と同様の給料表という縛りをなくすことです。そうなれば、少なくとも「地域間給与配分の見直し」は、国家公務員の課題であっても、富山県職員の課題ではなくなります。また、そのためにはこのコラム⑤「富山県職員の本当の賃金水準は」で指摘したとおり、ラスパイレス指数の欠陥こそ見直してもらわなくてはなりません。