我が家にテレビがやってきた1960年頃、NHKで「私の秘密」というテレビ番組がありました。「事実は小説より奇なりと申しまして」で始まるクイズ番組。このリメイクで、1970年代から80年代にかけて、日本テレビ系列で放送していた番組が「それは秘密です」。
いま、秋の臨時国会が開催中です。原発汚染水問題、TPPの聖域見直し、消費増税などの課題が山積。加えて53日の短期にもかかわらず、重要な法案が目白押しです。高齢者医療の負担増や介護保険制度の縮小、年金支給年齢の引き上げ検討などの「社会保障改革プログラム法案」。生活困窮者を窓口で追い返す「水際作戦」を後押しすると批判を浴びた「生活保護関連2法案」を再提出。雇用分野では、「国家戦略特区関連法案」。雇用分野の「特区」構想は、日本経済再生本部で労働時間に関する規制緩和が当面見送られ、解雇規制緩和についてはトーンダウンで決着しましたが、今後の行方に要注意です。そして、「特定秘密保護法案」です。公明党が修正を要求し、一定の譲歩があったとはいえ、秘密の範囲は曖昧なままで、恣意的運用の不安は払拭できません。審議中の「安全保障会議(日本版NSC)設置法案」と併せ、米国のために集団的自衛権を行使できる国づくりへの地ならしとなりかねません。
この法案は28年前「平成の妖怪」中曽根首相が執念を見せた通称「スパイ防止法案」のリメイク版です。当時は、憲法が保障する言論、報道の自由など基本的人権擁護があくまで「努力義務」であり、一般国民の人権侵害に対する救済措置のない点が特に批判に。大多数のマスメディアなどが反対したため、政府は内閣法案として提出できず、議員立法として提出しました。しかも結局野党に止まらず、自民党内部でも若手・中堅議員が反対して廃案となりました。
今回も、多くの学者、研究者、弁護士会、ペンクラブ、新聞協会や労働団体などが反対の意向や懸念を表明しています。世論調査でも反対が賛成を上回り、官邸前デモや集会が開催されています。戦前の大日本帝国憲法も、「法律の範囲内で」という前提付ながら29条で表現の自由を認めていましたが、新聞紙法や治安維持法が制定され、表現の自由が死に絶えました。あくまで情報は主権者である国民の財産。基本的人権に制約をつけると、そこから全体が蝕まれていくということは歴史の教訓です。基本的人権に風穴を開けさせてはなりません。