「ウソつかない/TPP断固反対/ブレない/日本を耕す自民党」「TPPへの交渉参加に反対!/比例代表は自民党へ」。これは、昨年総選挙での自民党のポスターコピーです。
「経済連携に関する特別委員会を設置し、さらなる情報公開と徹底審議を求めます」「アジア太平洋地域における経済連携には、様々な進め方があります」「経済効果という点ではTPP(一〇年間で2.7兆円)よりASEAN+3/6 (同5.5兆円)の方がはるかに大きく、例外品目の取扱いなどのハードルもASEAN+3/6の方が低い」「富士山に登ったら550万円、エベレストに登ったら270万円、どちらに登りますかと聞いたら、答えは明らかです」。これは昨年末時点での自民党広報資料です。
ところが、昨年の衆院選で政権を奪還した自民党安倍首相は、2月の日米首脳会談で「(内容の)最終結果は交渉の中で決まる」との見解で一致したとして、3月15日に交渉参加を正式表明しました。
GDPで見ると参加国のうち、日米両国で8割を占めます。オバマ政権は、TPPによって輸出を伸ばして国内景気を良くしようと考えており、経済規模が大きな日本を交渉に引き込むことは是が非でも必要だったのです。また、第2の経済大国である中国への対抗策として、中国を外した経済協定は米国の利益確保につながります。軍事面でも、財政難で軍事削減を迫られる米国に対し、中国は3年連続で軍事費を10%以上増やしています。冷戦時代のような対応が難しいため、中国と反目する国と経済的結びつきを強め、同盟関係を築き、中国包囲網を作りたい・・・。そんな見方もできます。強大な力を持つ「米国の脅威」は懸念の一つです。TPPのメリットをあえてあげるなら、米国の圧力を多国間で防げることぐらい。しかし、安倍首相がそうした動きをしているという話は聞きません。
5月22日に東大の醍醐名誉教授らのグループは政府試算を検証した結果を発表しました。政府試算ではGDP0.66%(約3.2兆円)増と見込んでおり、安倍首相は3月15日に、この試算を元に「経済全体でプラス効果が見込まれる」と説明。しかし、作業チーム試算では、関連産業の影響を考慮した結果、逆に「△1.0%(4.8兆円)減になる。政府はTPPのデメリットを国民にしっかり示すべき」としています。また東大の鈴木教授の研究室グループも、TPPは、他のFTA(自由貿易協定)と比べ、経済的利益は小さいとする試算を発表。日米の事前協議で、米の自動車関税撤廃が先送りされた件に触れ、「日本にとって一番メリットの少ないものになった」と警告。政府試算の非常識が指摘されています。
自民党は野党時代の主張を180度変え、参議院選までは極力TPPには触れないようにしている・・・と言われています。私たちの暮らしに深く関わるTPP交渉。ウソで固めていては、賢明な判断などできません。