「今回の政府の決定は、財政・地方交付税における歴史的過ちである」。神奈川大学教授の青木宗明教授が、公務員連絡会地方公務員部会が主催する院内集会・国会議員要請行動で訴えました。指摘した過ちは2点。
まず、地方交付税の「単位費用」算定で重大なルール違反がある点です。通例給与費は交付税法第2条6に従い、全国的に見られる雇用の実態から標準の水準を設定します。ところが、今回の算定では、給与費を実態と無関係に勝手に削除。政府目標を「標準行政」と言ってよいなら、財政力のある自治体以外は、財源がない以上国にひれ伏すしかなく、国は地方をいかようにもコントロールできることになります。そうなれば、地方交付税は「地方固有の財源」ではなく、「補助金」となり、交付税によって実現されるはずの地方自治など「絵空事」になってしまいます。
次に、政府は、「一般財源削減分は見合い財源で別枠加算を確保した」と言います。しかし、見合っているのは数字だけ。しかも地方分権に逆行している点です。政府が「見合い財源」としているのは次の3つ。①全国防災事業費(地方負担分)973億円=地方債で手当(充当率100%、交付税措置率80%)、②緊急防災・減災事業費4,550億円=地方債で手当(充当率100%、交付税措置率70%)、③地域の元気づくり推進費3,000億円=一般財源(だが、とんでもなく条件付)というもの。①と②は、完全なる特定財源です。一般財源を削減しておいて、それを特定財源に置き換え、しかもすべて地方の借金。さらに、借金を返す際、交付税で考慮されるのは7~8割のみです。地方分権という場合、特定補助金を一般財源へ置き換えていくというのは世界の常識ですが、分権に逆行した措置です。③も特定の条件(ラスパイレス指数が低い、職員数の削減が大きい)を満たす自治体の地方交付税を増額するというもの。いわゆる「行革算定(行革インセンティブ算定)」と呼ばれる悪慣行で、交付税の「特別枠」などで「行革を誘導」するものとして政策的に使われてきました。また、交付税は「動態的な算入=公共事業費のように自治体の主体的な行動によって数値が増減してしまう算入方式」はやめて「静態的な算入」に変えていくべきですが、地域の元気づくり推進費や「行革算定」は「動態的な算入」そのものです。
地方税2法案採決にあたり、衆参の総務委員会は「自主的かつ持続可能な財政運営を可能とする地方税財政制度の構築及び東日本大震災への対応に関する決議」を行いました。地方議会でも抗議する意見書が続々採択されました。政府はこの事実を「歴史的犯罪行為に対する警告」と受け止め、率直に反省すべきです。「職員給与と県民サービスのどちらを選ぶかといった比較の問題」などという次元の話ではありません。地方には、こうした犯罪の共犯者とならないためにあらゆる努力が必要なのです。