財団法人日本生産性本部が提唱する「生産性三原則」とは、「雇用確保」「労使協議」「公正配分」を言います。好循環を実現した高度成長期には成果を見せました。そもそも経済成長のメカニズムとは、「需要増→供給増→所得増→需要増→」のサイクルが連動することで実現します。
「日本経済には賃上げが不可欠」。国際労働財団が都内で開催したシンポジウムで、日本総研の山田久調査部長が提言しました。講演でまず指摘したのは、通常、労働生産性の伸びに伴って賃金も上昇するところ、日本は90年代後半から、労働生産性の上昇に反比例する形で賃金が低下している点。これは他の先進国と比べると異常です。先の「生産性三原則」はすでに破壊されているのです。リーマンショック以降の日本経済で停滞が長引いている理由の一つです。次に指摘したのは、「経営の質」。経営サイドが主な賃金抑制の論拠としているのは、「株主からの圧力」と「アジア諸国との競争激化」です。しかし、「企業の持続的成長には、労働生産性に見合った賃金が必要。それを十分行わず株主に多く配当を支払うことは、貢献を超える支払い」。「国際競争を理由とする抑制論はある意味、経営者の怠慢。新興国に造れないものを造るのが経営の質だ。むしろ賃金を上げることで付加価値を生み出す力をつけていかなければならない」と主張。また、「賃金抑制経営の行き着く先が、不安定雇用・未熟練労働の増加。特に若年層にまともな仕事が少ないという現状は将来の付加価値を生み出す能力を落とす」とも指摘。
これまでの経済政策の失敗は、「需要増→供給増」にほぼ限定した政策が中心で、「供給増→所得増」のプロセス=「適切な労働分配戦略」がなかったこと。「所得増→需要増」の施策=「信頼性の高い社会保障制度による将来不安の解消」がなかったことが原因です。春闘をはじめとする賃金・雇用の回復を求める社会的運動と応能原則で財源を確保し、安心を提供する社会保障・税制改革こそ今最優先の課題です。
3月9日の北日本新聞社説では、退職金引き下げをめぐる対応や地方公務員給与引き下げを前提にした地方交付税削減に対し、「現場を見ない未熟な政治のしわ寄せ」と書いています。そうした意味では、私たちだけでなく、知事や県民も犠牲者なのかもしれません。しかし、いつまでもそんな「未熟な政治」の犠牲に甘んじているわけにはいきません。