1930年代初頭の日本は、2大政党で内閣が毎年のようにくるくる変わり、不安定な政治でした。また、濱口内閣の失政により、深刻な不況を迎えていました。民政党の若槻首相が「大連立」を目指したものの失敗。そんな中、陸海軍の青年将校による「昭和維新」運動が注目されました。五・一五事件や二・二六事件などのテロ・クーデターです。非合法であったにもかかわらず、将校たちは国民的人気を博しました。その後、軍部が力を持つようになり、満州事変へとつながっていったのですが、戦後も「昭和維新」は民族派右翼のスローガンでした。
「平成維新」の橋下維新の会は、もちろん合法ですし、テロやクーデターとは無縁ですが、時代背景だけでなく、橋下氏の「攻撃的な発言」や「維新八策の内容」、「異常な人気ぶり」など、「昭和維新」と類似点を指摘する声は少なくありません。また、「多彩」な維新八策ですが、その中に貫かれているものは、「小さな政府」と「権力集中」で、新自由主義政策そのものです。「国会から自立して権力を振るえる首相公選」、「国会での少数意見を排除する参院廃止と衆院定数半減」、「地方都市や農村を切り捨てる道州制」、「労働者保護を縮小する規制緩和」等々。
それにしても、橋下市長の公務員と労働組合に対するバッシングは異常です。そもそも公務員の人件費が財政赤字の原因でないことは明らかです。日本の公務員人件費は、OECD23ヵ国中最低。財務省によれば、国家公務員と地方公務員の人件費総額は26.9兆円、義務教育国庫負担金や議員歳費を加えても29.3兆円。これで国地方併せて940兆円の長期債務ができたとは考えられません。ちなみに公務員人件費2割削減で長期債務を返済するとすれば、約160年かかります。一方、国債は国の「借金」であると同時に、それを保有する者にとって国が税金で利子収入をもたらしてくれる「超優良金融資産」でもあります。しかもその保有者は、9割以上が国内の民間企業です。では、財政赤字の根本原因は何だったのでしょう。バブル崩壊後税収が減りはじめますが、景気対策のために財政出動を行いました。自治体財政もこれに動員されました。さらに、富裕層、大企業への減税等で再配分機能の破壊を行いながら、低賃金の非正規労働者を増やし、正規労働者の賃金も下げ続けてきたため、「モノが売れない」デフレスパイラルを招いてしまったことにあります。財政赤字と公務員バッシングを解消する道は、賃上げと貧困・格差解消へ舵を切ることです。