風に吹かれて 1(2012年7月10日)

佐々木委員長コラム「風に吹かれて」 1(2012年7月10日)

「沈まぬ太陽」は今も

先日、日航キャビンクルーユニオン(CCU)の方からお話を聞く機会がありました。 経営再建中の日本航空(JAL)で二〇一〇年の大晦日に165人が「整理解雇」されました。このうち、元機長や客室乗務員ら142人が解雇無効などを求め係争中です。元乗員と元客室乗務員の二つの原告団は4月、解雇を有効とした3月下旬の東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴しています。

彼女たちはこう訴えます。

裁判では、経営破たんしたJALによる「整理解雇」が、有効かどうかが争われている。整理解雇とは、人員削減を目的に何の落ち度もない従業員を解雇すること。労働者に責任がないため、厳しく制限されている。判例上、(1)人員削減の必要性(2)解雇回避の努力義務(3)人選の合理性(4)手続きの妥当性、の4要件を満たす必要がある。しかし、経営トップの稲盛和夫会長でさえ「会社の収益状況から(165人の)雇用を続けることは不可能ではない」と法廷で証言しており、そもそも解雇の必要性はなかった。また、管財人弁護士には「実績を作りたい」、旧経営陣には「言いなりにならない組合を排除したい」、という不純な動機があった。JALは破たん後、2010年度に1884億円、11年度は2049億円という過去最高の営業利益をあげたが、165人分の人件費は14.7億円でその百分の一にも満たない。加えて、賃金・労働条件の低下で退職者が相次いでいることから、710名の新規採用を計画。165人を戻すことは会社にとってプラスにこそなれ、マイナスになることはない、と。

たとえ経営体制が変わっても、山崎豊子が描いた「沈まぬ太陽」の体質・風土は今も変わっていないようです。「今はアルバイトしながら、がんばっている」と前向きに話す姿はキラキラと輝いて見えました。憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」と規定していますが、健全な働くルールを保持するためでさえ労働組合の不断の努力が必要なのだ、と思いを巡らしました。

今年3月14日に、大阪市は労組に対して「職員基本条例」を提示。5月25日には議会で可決しました。この条例は、一言で言えば職員の首切りを合法化しようとするもの。橋本構想は、直接ターゲットになっている「大阪の問題」でも「公務員の問題」でもありません。全労働者の問題です。橋本市長なら、彼女たちの話を聞いて何を思うのでしょうか。

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